航空機および発電用ガスタービンを巡る技術においては,タービン作動温度の高温化によるエネルギー効率の改善と,遮熱コーティングが施されたタービンブレードそのものの長寿命化を図ることが急務となっています。そのためには実際の動作環境に近い条件で遮熱コーティングの寿命を評価する必要があります。
JIS H7851「遮熱コーティングの温度傾斜場での熱 サイル試験法」および ISO 13123 “Test method of cyclic heating for thermal-barrier coatings under temperature gradient”が制定され、標準試験法を用いて遮熱コーティングの熱サイクル剥離寿命を評価できるようにな りました。
航空宇宙技術振興財団では、この標準試験法の普及を図るとともに、安全で簡明な操作性を有する、 熱サイクル剥離寿命試験システムの設計・開発してきました。正確な評価データを与える熱サイクル剥離 寿命試験を通して、エネルギー利用の高効率化とそれによる CO2 削減に資するタービンブレードの長 寿命化に資することができます。 当財団はTBC熱サイクル評価用試験装置を用いた、遮熱コーティング の耐熱性および熱サイクル剥離試験を実施しております。
この度、関係諸機関の協力を得て装置を製作し、動作確認を終了したため、
遮熱コーティングのユーザや研究開発機関を対象とした遮熱コーティングの耐
熱性および熱サイクル剥離試験の受託を開始しました。
■試験の概略
コーティング表面をバーナーで加熱し、裏面 を水で冷却することによりコーティング (層)に温度差を与え、この熱サイクルを所 定の回数繰り返し行うことによって耐熱性と 熱サイクル剥離寿命を評価する。
試験法の規格; JIS H 7851, ISO 13123 参考文献;A.Kawasaki, R.Watanabe, Engineering Fracture Mechanics 69 (2002) 1713-1728.
■何を計測するか
表面温度、裏面温度を測定することで、コーテング内の温度差、温度勾配を求めます。そこから熱流束、有効熱伝導率を測定します。Acoustic Emission(AE)により、割れや、剥離現象を音響データとして捉え、遮熱性、耐熱性、剥離寿命等を評価します。
試験方法の詳細、サンプル形状についてはJISで規定していますが、コーティング材料、基材の材質、試験情報など、ご不明な点はお問い合わせください。
■実験動画
参考文献等
◉温度傾斜場におけるTBCの耐熱試験法:ISO13123 、熊川、川崎、小野 表面技術Vol.64, No.5 ,2013
◉遮熱コーティングの特性評価試験方法の標準化活動、髙橋 智、高温学会誌 第37巻 第5号 (2011/9)
◉レーザを用いた急速熱サイクル試験による TBC の損傷過程、林,鈴木,荒井,伊藤,樋口,水津 日本機械学会論文集、Vol.86,No.883,2020